山村若三のブログ。メモ代わりに気が向いたときに思いついたことを記録します。
歌舞伎役者のように1か月近く毎日同じ演目で舞台に立つことができれば随分上手くなる
のにと思う。
踊りの場合はほとんど一発勝負なので、本番の舞台では緊張を伴う。
緊張すると身体に力が入って筋肉が固くなり、普段すんなりできる動作がやり辛くなる。
身体のバランスが悪くなってギクシャクした感じになる。
これを克服するには緊張した状態で舞台に立つ経験を増やすことと、普段の稽古で自分の
技術レベルをできるだけ引き上げておく必要がある。
稽古で100できるところを舞台で60しかできないなら、稽古で120までできるようにする。
そうすると本番では、悪くても70点のパフォーマンスが保証される。
完璧を求めない。悪くても70点、上手くいけば90点。これで良しとする。
晴れの舞台だからと、リキんではいけない。上手くやろうとしないこと。
無欲に、ただ稽古どおりにやるだけでよい。
これができたら誰も悩みませんね。
「いい形」とは身体的に不自然でない形、つまり結果として身体に負担のかからない
姿勢だろうと思う。
身体に負担のかからない姿勢に関する技法としてアレクサンダーテクニークというのが
ある。
ウィキペディアによれば、背中や腰の痛みの原因の改善、事故後のリハビリ、呼吸法の
改善、楽器演奏・発声・演技を妨げる癖の改善などに用いられることがあるという。
基本的な考え方は、
1)頭、首、背骨を身体構造上最も負担のかからない位置と方向に維持すると
2)身体の緊張が解かれて人間に生来そなわっている初源的な調整作用が活性化し
3)無意識に行っている習慣的な反応(無駄な動作やクセ)が抑制されて
4)自分の全力が自由に発揮できるようになる
というものだ。
十代目三津五郎は「踊りの愉しみ」の中で「腰を安定させて、上半身を楽にする」と
書いているが、踊りで自分の全力を自由に発揮するための重要なポイントになる。
これができるようになると「手に力を入れない」「顔の位置を安定させる」「遠心力を
利用する」とかもできるようになるだろう。
身体的に理想の形を理解し身につけるのは難しいし時間もかかるが、十分取組む価値がある。
十代目三津五郎が「踊りの愉しみ」という本の中で踊りのポイントについていくつか
書いていて、その中に「基本的ないい形を覚える」というのがある。
日舞でも邦楽でも、いったん自分の先生を決めたらその先生をお手本にして、先生の
形を真似ることで少しずつ基本を身につけていく。
書道教室で先生が書いたお手本を左に並べて、それとそっくりに書けるよう何度も練習
するのと同じだ。
踊りで先生に立って稽古してもらえるのが3回だとしたら、その3回のうちにまず形を
目に焼きつけてしまう。いい形を確認するチャンスは3回しかないから、この最初の
3回にとにかく集中する。
手順を覚えるのは先生が座ってからでもやってもらえるから後回しで構わない。
ところが10年稽古しているのに手順を覚えることばかりに一生懸命で、稽古中に手本を
ほとんど見ない人が結構いるのだ。
もし舞踊譜というものがあるなら(山村流にはありませんが)、こういう人は譜を買って
自分で稽古すれば足りることになる。
これでは何年やっても上手くならない。
まず基本的ないい形を覚えて、自分の頭の中でイメージできるようになること。
イメージができたら、それを自分で再現できるようにして先生に見てもらう。
直されたら修正して、それができるようになったらまた見てもらう。
これを繰り返すだけ。