山村若三のブログ。メモ代わりに気が向いたときに思いついたことを記録します。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「いい形」とは身体的に不自然でない形、つまり結果として身体に負担のかからない
姿勢だろうと思う。
身体に負担のかからない姿勢に関する技法としてアレクサンダーテクニークというのが
ある。
ウィキペディアによれば、背中や腰の痛みの原因の改善、事故後のリハビリ、呼吸法の
改善、楽器演奏・発声・演技を妨げる癖の改善などに用いられることがあるという。
基本的な考え方は、
1)頭、首、背骨を身体構造上最も負担のかからない位置と方向に維持すると
2)身体の緊張が解かれて人間に生来そなわっている初源的な調整作用が活性化し
3)無意識に行っている習慣的な反応(無駄な動作やクセ)が抑制されて
4)自分の全力が自由に発揮できるようになる
というものだ。
十代目三津五郎は「踊りの愉しみ」の中で「腰を安定させて、上半身を楽にする」と
書いているが、踊りで自分の全力を自由に発揮するための重要なポイントになる。
これができるようになると「手に力を入れない」「顔の位置を安定させる」「遠心力を
利用する」とかもできるようになるだろう。
身体的に理想の形を理解し身につけるのは難しいし時間もかかるが、十分取組む価値がある。
十代目三津五郎が「踊りの愉しみ」という本の中で踊りのポイントについていくつか
書いていて、その中に「基本的ないい形を覚える」というのがある。
日舞でも邦楽でも、いったん自分の先生を決めたらその先生をお手本にして、先生の
形を真似ることで少しずつ基本を身につけていく。
書道教室で先生が書いたお手本を左に並べて、それとそっくりに書けるよう何度も練習
するのと同じだ。
踊りで先生に立って稽古してもらえるのが3回だとしたら、その3回のうちにまず形を
目に焼きつけてしまう。いい形を確認するチャンスは3回しかないから、この最初の
3回にとにかく集中する。
手順を覚えるのは先生が座ってからでもやってもらえるから後回しで構わない。
ところが10年稽古しているのに手順を覚えることばかりに一生懸命で、稽古中に手本を
ほとんど見ない人が結構いるのだ。
もし舞踊譜というものがあるなら(山村流にはありませんが)、こういう人は譜を買って
自分で稽古すれば足りることになる。
これでは何年やっても上手くならない。
まず基本的ないい形を覚えて、自分の頭の中でイメージできるようになること。
イメージができたら、それを自分で再現できるようにして先生に見てもらう。
直されたら修正して、それができるようになったらまた見てもらう。
これを繰り返すだけ。
ひとつの仕事が終わり、すぐに次の目標に向かって進み始めようとすると、
なかなかエンジンがかからなかったりすることがある。
カレンダーを見ながら「コレが終わったらソレに取り掛かって、その後アレに
集中しよう」などと前もって計画していたのに、「コレが終わった」ところで
すっかりやる気がなくなり、気が進まないまま「ソレ」に取り掛かり、それが
終わったらもう「アレ」は完全にやりたくなくなって、ブラブラと過ごす日が
何日も続いたりする。
今回は、先月の舞台が終わってから次の稽古に向き合えるようになるまで1か月
近くかかった。やるべきことが重なると気づかぬうちにストレスが溜まり気持ちに
余裕がなくなる。
落ち着いて考えることができずに、気晴らしにと酒を飲み過ぎて翌朝もっと気分が
悪かったりすると最悪だ。
年齢とともに体力は落ちるが、人間はロボットではない。
PCみたいにボタン一つで再起動できないので、ひとつの仕事を終えたら必ず
気分転換することだ。
次からはリフレッシュの時間も予めカレンダーに記入しようと思う。
楳茂都陸平先生が昭和33年に書かれた「舞踊への招待」という本がある。
40年近く前、大学の図書館で偶然見つけて拾い読みしたところがずっと記憶に残っていて
古書店を探し回り、1年前にようやく手に入れた。
この中に楳茂都流の奥義について言及した「三つの大事」という箇所がある。
「三つの大事」は楳茂都流で一子相伝の口伝とされ、初代から三代目(陸平先生)まで
門外不出の厳しい秘事となっていたのを、陸平先生が舞踊技巧の基礎をわかりやすく
説明するために、すべての弟子に公開したという。
三つの中に「六方の備」というのがある。六方とは舞台の四隅と正面と裏のことで、
六方に身体を沿わせる空間原理のことだ。
自分は大学に入ると母に連れられて大阪の家元の稽古場に伺うようになったが、ちょうど
その頃糸先生が京都の陸平先生のところにお稽古に通われていて、自分は糸先生から
このことを教わった。
対角線に身体を向けると客席のどの場所からでもきれいな姿に見えて、日舞に限らず
ディスコ(懐かしい!)で踊るときにもこれが役に立つと言われた。
「こんな簡単なことがどうして奥義なのだろう」と当時は思ったが、寸分違わずこれを
実践するには相応の稽古を積む必要があるし、これを独学で発見し修得しようとするなら
10年とか20年とかかかるかもしれない。
奥義と言わずとも、芸事のコツというのはわかってしまえばシンプルなもので、師匠に
恵まれて本人にその気があれば回り道しないで効率よく身につけることができると思う。