山村若三のブログ。メモ代わりに気が向いたときに思いついたことを記録します。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ただいまコメントを受けつけておりません。
楳茂都陸平先生が昭和33年に書かれた「舞踊への招待」という本がある。
40年近く前、大学の図書館で偶然見つけて拾い読みしたところがずっと記憶に残っていて
古書店を探し回り、1年前にようやく手に入れた。
この中に楳茂都流の奥義について言及した「三つの大事」という箇所がある。
「三つの大事」は楳茂都流で一子相伝の口伝とされ、初代から三代目(陸平先生)まで
門外不出の厳しい秘事となっていたのを、陸平先生が舞踊技巧の基礎をわかりやすく
説明するために、すべての弟子に公開したという。
三つの中に「六方の備」というのがある。六方とは舞台の四隅と正面と裏のことで、
六方に身体を沿わせる空間原理のことだ。
自分は大学に入ると母に連れられて大阪の家元の稽古場に伺うようになったが、ちょうど
その頃糸先生が京都の陸平先生のところにお稽古に通われていて、自分は糸先生から
このことを教わった。
対角線に身体を向けると客席のどの場所からでもきれいな姿に見えて、日舞に限らず
ディスコ(懐かしい!)で踊るときにもこれが役に立つと言われた。
「こんな簡単なことがどうして奥義なのだろう」と当時は思ったが、寸分違わずこれを
実践するには相応の稽古を積む必要があるし、これを独学で発見し修得しようとするなら
10年とか20年とかかかるかもしれない。
奥義と言わずとも、芸事のコツというのはわかってしまえばシンプルなもので、師匠に
恵まれて本人にその気があれば回り道しないで効率よく身につけることができると思う。