「おさらい会を観た人から『みなさん、先生にそっくりですね』と言われたら
オマエはヘタということや」
踊りを教え始めたころ、ある先生にそう言われた。
弟子や生徒は先生のクセを真似したがる。生徒が自分に似るのは自分にクセが
あるから、ということらしい。
お稽古は先生(=お手本)を真似ることから始まるから、熱心な生徒ほど
先生そっくりになる。
「誰に習っても一緒やで」
昔、四世宗家があるお弟子さんに言われた言葉。
器用なお弟子さんは先生そっくりに踊るので、踊りを見たらどの先生に習ったか
すぐにわかる。クセを真似ることを戒められたのだろうか。
誰しもクセはあるものだが、それが見えるようではダメということだ。
自分のクセを制御する技術が必要。
一方で鍛え抜かれた身体に現れるクセ、というか動きの中に見え隠れする
その人固有の特徴は美しく魅力的だ。
教科書のような舞を舞えるようになった先にある「達者」のステージ。
そういう姿に憧れながら、日々自分のクセと格闘しております。